湘南台トワイライトコンサートを聴いて
湘南台トワイライトコンサート「ロベルト・シューマンの肖像」を聴いて来ました。
三原さんのソロは、「リーダークライス」から3曲と「詩人の恋」全曲でした。
何という心満たされる演奏会だった事でしょう
何と繊細で熱くて強くて弱くてもろくて激しい心模様でしょう。今夜、この演奏に立
ち会えた事を何よりの幸運と思いました。
今から14年前の1994年、初めて三原さんの生の演奏を聴いたいずみホールでのリサイ
タルでも「リーダークライス」がプログラムにありました。何てロマンティックな演
奏だろう、と思って聴いていました。特に「わたしの悲しみの美しいゆりかご」が気
に入って、近所の図書館で楽譜を借り、この曲のコピーを取って何度も歌って思い出
していました。
この時の新聞の切り抜きが手元にあります。間宮芳生さんの評です。
「とにかく今のところ豪速球一本やりという歌だ。山にたとえると、峰々を律儀にク
リアしてゆく感じ。下手うまのちょうど逆だ。(中略)三原の技あって術に結ばずの
下手から、聴くものの心をゆさぶり、喜びで満たす術の人への変身を期待しよう。こ
れは全く期待するに十分な大型の才だから」
あれから14年経った今夜、同じ曲を再び聴きました。三原さんの才能を以てたゆまず
精進された円熟味。技は更に優り、深く広く世界が広がり、心を満たす演奏を聴く喜
びを本当に久し振りに味わう事ができました。
「詩人の恋」は、2005年に「ハイネと白秋の世界」でも聴きました。この曲は、暗く
て余り好きではなかったのですが、三原さんの演奏を聴いて初めて、こんなステキな
曲だったのか、と思いました。あれから3年。「詩人の恋」は更に魅力を増し、殆ど
息をするのを忘れて聴いていました。
去年の湘南台トワイライトコンサートでは、シューベルトを取り上げられて、この時
の三原さんの「白鳥の歌」の評判が良く、是非もう一度聞きたいという声が圧倒的に
多かった事から、今年のシューマンも三原さんに、という事になったそうです。
解説と進行役をしておられた東京芸大の名誉教授の畑中良輔さんは、「今の日本でこ
の人以上にシューマンを歌える人はいないと思っています」と言っておられました。
(A・Y記)
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